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公安委員会の開催概要(令和4年5月18日)
審議概要
本部長、警務部長、生活安全部長、地域部長、刑事部長、交通部長、警備部長、情報通信部長及び首席監察官同席の上、下記の報告を受けた。
犯罪被害者等支援の取組状況
警務部長から、「犯罪被害に遭われた方は、身体的、精神的、経済的な被害を受け、その後直面する問題は多種多様であり、再び平穏な生活に戻れるようきめ細かな支援を途切れなく実施していくことが求められる。
条例制定の動きであるが、山口県では令和3年4月に山口県犯罪被害者等支援条例が施行されており、この条例には、各機関の役割や犯罪被害者に対する財政支援などの規定が盛り込まれている。また、市町の条例制定については、現在、4市4町で制定されている。市町の条例についても、財政支援の規定が盛り込まれているところもあり、例えばこの4月に制定された周南市では、被害者や遺族に対して見舞金が支払われるようになっている。
警察における支援状況であるが、捜査活動時の付き添いに加えて、犯罪被害者の精神的ケアを図る観点から警察県民課に在席する公認心理師の資格を持った職員によるカウンセリングを実施している。
経済支援については、性犯罪被害を受けた方の緊急対応に必要な医療費や事情聴取場所の借上げ、DV・ストーカーの被害に遭われた方の一時的な避難場所としてのホテルの借上げなどを公費負担している。こうした支援制度は、ニーズに応じた見直しをしており、例えば、精神医療にかかる公費負担制度であれば、これまでは被害者本人が精神医療を2回受けられることとしていたが、上限を10回まで拡充し、家族や遺族もこの制度が受けられるようにした。
被害者支援は、警察だけで完結するものではなく、司法、行政、福祉、医療など様々な機関・団体とネットワークを構築することが大切であり、年に1回山口県被害者支援連絡協議会を開催している。本年は6月30日に開催の予定である。
犯罪被害者等早期援助団体の活動状況であるが、県内には公安委員会指定団体として、「山口被害者支援センター」がある。活動内容は、電話・面接による相談対応、病院・警察・法廷への付き添い支援のほか、犯罪被害支援についての広報啓発活動である。
「山口被害者支援センター」の活動財源は、会費や寄附で支えられており、賛助会員は増加傾向にある。また、収益型・寄附型自動販売機の設置数も増加傾向にあるが、まだまだ十分とは言えず、警察としても支援していきたい。
今後の取組についてであるが、犯罪被害者支援は、身近に犯罪被害者のいる方は少なく、我が事として理解しにくい面があることから、県民の犯罪被害者等への理解・関心を深め、支援の輪を広げることが必要である。次に、条例未制定の市町に対しては、条例制定に向けた働き掛けをしていくこととする。更には「山口被害者支援センター」で活動する相談員やボランティアの育成を図るとともに、同センターの財政基盤強化に努めていく。」旨の報告があった。
今村委員から、「犯罪被害者等早期援助団体を公安委員会が指定する理由は何か。公安委員会が指定するにあたって必要な要件は何か。」旨の発言があり、警務部長から、「公安委員会が指定する理由は、援助団体を持続可能な形で整備していく観点から公安委員会が指定できるようにしている。指定するに当たっての要件は、営利を目的とせず、事業を適切かつ確実に行うことができる団体等である。また、求められる事業としては、支援に関する広報・啓発活動ができ、犯罪被害に関する相談に応じることができるなどである。」旨の説明があった。更に、今村委員から、「犯罪被害者等支援は、これからもっと必要になっていく領域だと思うので、被害者の早期援助団体が増えていくことを望むが、申請手続きの要領は広く一般に周知されているのか。」旨の発言があり、警務部長から、「申請手続きは、積極的には周知してないが、国家公安委員会規則で示されているので、知り得ることはできる状況にある。」旨の説明があった。更に、今村委員から、「6月に開催予定の『山口県被害者支援連絡協議会』の場において、こうした団体の数が増えるような働き掛けもしてもらいたい。また、自動販売機設置の拡大についてであるが、最近は、自動販売機の設置台数が減ってきているが、そのほかに財源確保につながる考えはあるのか。」旨の発言があり、警務部長から、「委員ご指摘のとおり、コロナウイルス感染拡大の関係で自動販売機設置の売上げが停滞しており、また、自動販売機はコンビニとの競争もある中、売上げを持続的に保つことができない可能性もある。したがって、自動販売機の設置促進と並行して更に会員数を増やせるよう力を入れていくこととしている。そのほか、『山口被害者支援センター』では、ホンデリングといって、寄贈してもらった本を買い取り業者に買い取ってもらい、その売り上げを寄附に充てる施策も講じている。このように賛助会員と自動販売機以外の手法でも財源の確保に努めていく必要性を感じている。」旨の説明があった。
弘永委員から、「条例が制定されている4市4町の中で、財政支援規定のない市町もあるが、そうした市町は財政支援しないのか。」旨の発言があり、警務部長から、「財政支援規定のない市町については、市町の財源を使って被害者や遺族に金銭的な給付はないが、国の制度で被害者に対する給付金の制度は設けられている。」旨の説明があった。
児童相談所出向警察官の活動状況
生活安全部長から、「警察から児童相談所に通告した児童数の推移であるが、5年前と比較すると全国では約1.7倍、山口県では約2.1倍であった。10年前と比較すると全国では約10倍、山口県では約13倍に増えている。
そのような状況において、児童相談所との連携強化により対応力の向上を図るため、平成31年4月から警部1名を中央児童相談所に出向させており、本年度からは、警部補1名を増員して体制を強化した。
出向警察官の活動状況は、
〇 児童虐待事案における児童の安全確認の徹底
・ 通告受理会議や援助方針会議における警察知見を活かした助言指導
・ 児童福祉司に同行しての学校などにおける児童の安全確認
・ 児童福祉司が個別に行う保護者・児童面接への同席
〇 児童相談所と警察との連携強化
・ 援助要請等に係る管轄警察署との連絡調整
・ 代表者聴取に係る警察・検察との連絡調整
・ 児童相談所職員に対する研修
・ 児童相談所、警察職員の合同研修
・ 人身安全対策専科等における児童相談所業務に関する講義
となっている。
今後の取組であるが、本年度から出向警察官1名を増員したことで、県内全域の援助要請や代表者聴取などの案件に対応するとともに、各児童相談所や市町と連携した活動を推進していくこととしている。そのほか、警察職員と児童相談所職員との相互理解に向けた研修等を進めていく。」旨の報告があった。
弘永委員から、「時々、ニュースで児童の痛ましい事件を耳にする。その中には、児童相談所職員が親の言いなりになったため、適切な措置ができなかった事案もあるようだが、児童相談所には強制的な権限はないのか。児童相談所と警察がもっと連携を図り、共に行動すれば、児童を守れるのではないか。」旨の発言があり、生活安全部長から、「児童相談所は、全てが任意ではなく、虐待行為が疑われる場合は臨検捜索許可状を得て、強制的に立ち入り、児童を救出する権限を有している。捜索の主体が児童相談所にある場合には、警察に応援要請がなされることもある。県内の児童相談所では、実際に臨検捜索許可状を得て捜索をしたことはないと承知している。今後も児童相談所と連携を図り、対応に不備がないようしていきたい。」旨の説明があった。更に、弘永委員から、「警察と児童相談所が合同で研修を行うことは良い取り組みである。是非、実質的な解決に結びつくような取り組みをお願いしたい。」旨の発言があった。
今村委員から、「今年から出向者が2名体制に強化され、これほど心強いことはない。2つの機関が連携を図っていく上で、児童相談所職員に対し研修をすることは、とても大事なことだと思う。児童相談所が、警察とどのように関わっていけばいいのか、理解を深めてもらえるよう取り組んでもらいたい。その一方で、警察は、児童相談所がどういうことをする機関なのかということも、部内に周知してもらいたい。」旨の発言があった。
弘田委員長から、「これまで体制を強化するよう言ってきたが、ようやく2名体制になった。警察の負担が大きいのは分かっているが、児童相談所と連携を図っていけば良い関係が生まれると思う。児童相談所には優秀な警察官が出向しているので、児童相談所で力を発揮してもらいたい。引き続きよろしくお願いする。」旨の発言があった。
「山口県交通安全フォトコンテスト2022」の開催
交通部長から、「このたび、交通ルールの遵守と交通マナーの向上を目的に、交通安全に関する写真を広く県民から募集し、県民一人ひとりの交通安全意識の高揚を図ることとした。
これまでは、小学生を対象に交通安全のポスターや作文のコンクールを実施していたが、交通安全に関する写真コンテストは当県初の開催となる。
主催は、山口県警察と山口県交通安全協会、後援は、山口県安全運転管理者協議会、山口県トラック協会、山口県である。
作品のテーマは、通学路における交通事故防止活動、手上げ横断など、交通モラル・マナーの向上に資する建設的な作品であれば自由である。なお、この募集は、交通事故現場の写真など、スケアード・ストレイトと言われるような恐怖を植え付ける写真は対象から外している。
応募作品は、一人3点以内で本年1月以降に山口県内で撮影した未発表の作品としている。
応募作品の撮影に当たっては、他の著作権や肖像権に抵触しないように被写体が人物の場合は、本人の承諾を得てから撮影、応募するよう要領に記載している。
表彰は、賞状や盾のほかに、副賞として3,000円から10,000円相当の県特産品ギフトを授与する。
募集活動は、チラシの配布、YouTube、県庁1階フロアのデジタルサイネージの活用、報道機関への情報提供などを積極的に行って、このコンテストの活性化を図っていくこととしている。
大規模災害を想定した「県災害警備本部」設置訓練の実施
警備部長から、「コロナ禍における現有資機材を最大限に活用した合理的かつ効果的な県災害警備本部の設置・運用を検証するために、5年ぶりに訓練を実施した。
訓練の想定は、大雨災害に伴う大規模な土砂崩れによって、家屋の倒壊や交通途絶の被害が発生したというものである。
訓練は、ヘリテレ、ドローン、モバイル等を活用して、映像を県災害警備本部に送信し、それを各執務室で指揮を執る幕僚に送り、併せて県の防災危機管理課にも送って情報を共有した。また、Web会議システムを活用した被災状況の映像を共有しながら、指揮を執るといった訓練であった。
内容と成果は次の4点である。
〇 警察用航空機等による情報収集
ヘリテレやモバイル映像に加えて、今回初めての取組となるドローン等の資機材を効果的に活用することで視聴覚にリアルに情報共有できたことを確認した。
〇 県との連携と情報共有
県警本部の映像回線を使用して県災害対策室、いわゆる防災危機管理課内にヘリテレ、モバイルの映像を配信して、情報共有を図るとともに、対策面においても県警と県が連携できることを確認した。
〇 Web会議システムにおける被災状況の映像伝送
各種映像を本部設置の大型モニターに映し出したほか、Web会議システムにも転送して、遠隔地であっても迅速な報告と指揮が図れるか検証した。
〇 その他
警察措置に齟齬を生じさせないよう報告の励行と現場映像の確認を徹底した。
なお、ドローンで撮影された映像は、現場の状況を災害警備本部と部隊間で共有するだけでなく、現場に必要な資機材の選定や救出救助部隊の進入経路を検討する上でも大いに役立つことが確認された。
今後の方針は次の4点である。
〇 Web会議システムを活用した指揮命令系統の構築
今後は、Web会議システムを運用部隊ごとにグループ化するなど、報告指揮命令系統の再編を検討していく。また、ネットワークの不具合が発生することを予測して担当者の配置も検討していく。
〇 現有資機材の拡充と習熟
現状では、警備部単独の資機材では足りないことが分かったので、拡充に向けた予算措置を講じていく。
〇 代替施設移転時における機能維持
施設移転訓練は、情報通信部が実施するので、その機会に警備部における訓練も併せて実施していく。
〇 ドローン操縦者の育成と拡充
6月までに機動隊員1名を育成することとしている。その後、育成された機動隊員を指導に当たらせて操縦者の育成と拡充に努めていく。」旨の説明があった。
今村委員から、「先週は、臨場感のある災害警備訓練を視察させてもらった。感心したことは、映像がとても鮮明であったこと。少し気になったのは、平時であれば鮮明な映像でも、有事の時に平時と同様の通信能力が発揮されるとは限らない。そうした発想も持って、訓練等してもらいたい。」との発言があり、警備部長から、「委員ご指摘のとおり、通信は警察活動の生命線であるので、平素から不感地帯の確認など、地域部を含めて情報を共有していきたい。通信に支障がある場合に備えて、それを補助する方法を情報通信部と協力しながら考えていきたい。」旨の説明があった。
弘永委員から、「大規模災害が発生した場合は、自衛隊の出動も考えられるが、そうした際の県警との連携はどのようにやっていくのか。」旨の発言があり、警備部長から、「自衛隊の出動は、県知事の要請に基づくもので、災害対策基本法に定められている。現地では、県警と自衛隊がそれぞれ現地本部を設置することになるが、そこで連携を図っていくこととなる。」旨の説明があった。
弘田委員長から、「ドローン操縦者の育成と同じように、モバイル等を使用して現場の映像を撮影する警察官の訓練は必要ないのか。」旨の発言があり、警備部長から、「機器の習熟についての訓練は、平素から実施している。今、一番の問題は、ドローンの操縦者の育成であり、警察学校のグランド等を使用して早急に取り組んでいきたい。」旨の説明があった。
決裁・報告
課長等から下記のとおり説明を受け、決裁を行うなどした。
決裁概要
- 特例教習を行う自動車教習所の指定
運転免許課長から、特例教習の概要等について説明を受け、公安委員会に特例教習の届出をした自動車教習所6校について決裁した。 - 苦情の申出に対する回答
交通指導課長及び地域運用課長から、4月20日に受理した公安委員会宛ての苦情について、それぞれ調査結果の説明を受け、回答文を決定した。 - 審査請求の受理及び弁明書の提出要求について
警察県民課長から、3月25日付けで警察本部長が行った処分について審査請求を受理した旨の説明を受け、了諾するとともに、処分内容の説明を受け、弁明書の提出要求を決定した。 - 管轄条例の一部改正
企画室長から、山口市小郡下郷の一部区域における住居表示の新設に伴う条例の一部改正について報告を受け、決裁した。 - 交番等告示の一部改正
企画室長から、山口市小郡下郷の一部区域における住居表示の新設、長門警察署三隅警察官駐在所の建て替え及び山口警察署阿東桜交番の統廃合に伴う公安委員会告示の一部改正について報告を受け、決裁した。 - 留置施設視察委員の任命
留置管理課長から、本年度の山口県留置施設視察委員会委員の任命について報告を受け、決裁した。 - 運転適性検査の実施に関する内規の廃止
運転管理課長から、運転適性検査の規定の見直し状況等の説明を受け、内規の廃止を決定した。 - 苦情の申出の受理
公安委員会会務官から、公安委員会宛てになされた苦情の申出について説明を受け、苦情として受理した。
報告概要
- 山口県公安委員会事務の専決状況
交通企画課長から、4月中の交通企画課関係の専決状況について、交通指導課長から、4月中の交通指導課関係の専決状況について、警備課長から、4月中の警備課関係の専決状況について、それぞれ報告を受けた。 - 山口県警察視閲式の個別要領について
5月28日に開催される視閲式の実施手順について説明を受けた。 - 監察関係業務報告
監察官から、4月中の非違事案について報告を受けた。
協議
今後の公安委員会における運営について協議した。
その他
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、委員3名は、Web形式により別室から出席した。
(編集 総務課)