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知事発言集・平成29年度本庁部課長・出先機関の長合同会議知事訓示
はじめに
皆さん、おはようございます。
新年度のスタートに当たりまして、本日は、県政運営に当たって職員の皆さんと「志」を一つにし、県民の皆様の期待にしっかりと応えるべく、県庁一丸となって「行動」していくために、今年度の県営運営についての私の考え方を申し上げたいと思います。
2つの突破すべき課題
皆さんにまずしっかりと認識していただきたいのは、今年度が、本県の今と未来を創る上で、突破しなければならない2つの大きな課題に取り組んでいく、たいへん重要な年であるということです。
その一つは、最終年度を迎えた県の総合計画「元気創出やまぐち!未来開拓チャレンジプラン」の仕上げの年として、プランの目標達成を確実に成し遂げなければならないことです。
そしてもう一つは、本県の将来を見据え、活力ある県づくりを支える持続可能な財政基盤を確立するため、行財政構造改革に本格着手することです。
この2つの課題への対応を両立させることは、大変な困難を伴うであろうと思います。大きな負担をかけることとなりますが、皆さんの取組に強く期待しています。この2つの課題の突破に向けて、全力で取り組んでいただくように、まずもってお願いします。
県政運営の基本的考え方
そうした中で、改めて本県が置かれた状況を見ますと、最大の課題である人口減少は、深刻の度合いを増しております。一昨年の国勢調査でなんとか140万人台を維持しましたけれども、直近の統計では、既に140万人を割り込んでいます。また、昨年の人口の転出超過は約3,800人と、前年の約4,600人からは縮小したものの、社会減の流れを断ち切るための道程は、なお厳しいものがあると思っております。
人口の減少が産業や地域の活力を低下させ、そのことは更なる人口減少に拍車をかけていくことになります。財政面にもたいへん大きな影響が出てくるということで、こうした悪循環の進行を何とか食い止めていかなければなりません。この難局を乗り越え、未来への確かな展望を切り拓いていくことが、今まさに求められています。
150年前の我が国も、大きな困難に直面していました。欧米列強の外圧に晒される中で、幕藩体制からの転換を果たし、急速な近代化を成し遂げた幕末・明治期の改革の歴史は、現代にも多くの教訓を与えてくれます。
来年は、明治改元から150年という節目の年を迎えますが、この機を捉えて、私は、そうした困難を乗り越えて挑戦を重ね、近代国家としての礎を築き上げた先人たちの「志」と「行動力」を、我々自身が率先して学び、この苦境に立ち向かう糧とすることが必要であると考えています。
こうした思いを職員の皆さんと共有し、「活力みなぎる山口県」を創り上げ、後世へつないでいくということを、しっかりとしていきたいと思いますし、そのために皆さんの精力的な取組をお願いします。
具体的に、5つの項目について申し上げます。
チャレンジプランと総合戦略の推進
まず1点目は、「チャレンジプランと総合戦略の推進」についてです。
チャレンジプランに基づくこれまでの取組によって、企業誘致や観光客の増加、山口宇部空港での国際定期便の就航や政府関係機関の県内への移転の実現、全ての市町立小・中学校におけるコミュニティ・スクールの設置など、様々な分野で、目に見える成果が出てきています。一方で、先程申し上げたとおり、人口減少については、依然として厳しい状況が続いています。
こうしたことを踏まえて、今年度は、これまでの取組の上に立って、成果が上がっている部分はこれをさらに伸ばし、弱い部分についてはしっかりと取組を強化していく、そうしたことをしながら、チャレンジプランの目標達成と達成水準の一層の向上を図っていかなければなりません。
また、本県の地方創生の具体的な道筋を示す「山口県まち・ひと・しごと創生総合戦略」に即し、若年者6,000人の雇用の場の創出や転出超過の半減、合計特殊出生率の向上等に向けた取組を、さらに加速・深化させていくことが必要です。
このため、今年度の当初予算では、「チャレンジプランの目標「突破」と地方創生の加速」を基本方針の一つに掲げ、施策重点化方針に基づく事業に対して、重点的・集中的に予算を配分しています。
このうち、特に、人口減少の克服に向けた産業・地域・人材の活力創出の取組について、申し上げたいと思います。
若者に魅力ある雇用の場の創出
まず、「若者に魅力ある雇用の場の創出」については、若者や女性を県内にとどめ、呼び込むことに必要な魅力ある雇用の場を創っていくため、「水素先進県」の実現に向けた新たな技術開発に対する支援や、首都圏での集中的なPR、補助制度の拡充等による企業誘致の加速化などに取り組みます。
また、観光におけるDMO戦略の推進体制の強化や、新たに観光スポーツ文化部に「インバウンド推進室」を設置し、現在急増しているインバウンド需要の確実な取込みを図るほか、民間主体で設立する地域商社との連携や、水産インフラの輸出を目指す県内企業の支援等により、国内外に向けた県産品等の売り込みを強化することにしています。
県内への定着・還流・移住の推進
次に、「県内への定着・還流・移住の推進」については、進学・就職時における若者の県外流出に歯止めをかけるため、昨年10月に設立した「大学リーグやまぐち」と連携した長期体験型インターンシップの推進や、県内企業の魅力情報の発信等により、学生の県内就職を促進します。
また、県外からの移住を進めるため、県内全市町が参画する東京での「やまぐち暮らしフェア」などを実施します。
結婚・出産・子育て支援の充実
次に、「結婚・出産・子育て支援の充実」については、少子化の流れを変えるため、引き続き積極的な取組を展開することとしています。新たな婚姻世帯等を対象とした「結婚応援パスポート」制度や、夏休みなど長期休暇期間に開設する放課後児童クラブの運営費助成制度の創設などを行っています。
持続可能で元気な地域社会の形成
次に、「持続可能で元気な地域社会の形成」については、住み良い地域社会を創るため、「やまぐち元気生活圏」づくりに向けた市町や地域の主体的な取組の支援や、サテライトオフィスの誘致等による中山間地域でのビジネスづくりなどを推進することとしています。
これらの取組を進め、その効果を最大化していく必要があります。皆さんには、今一度、現場重視・成果重視・スピード重視の3つの基本姿勢を確認し、今後の執行に際しても、一層の工夫に努めていただきたいと思います。
また、これまで整えてきた様々な主体との連携の仕組みや体制を最大限活かし、一体となった実践的な取組を積極的に推進するとともに、それぞれの事業を必要とし、活用していただく方々に対して、事業内容等を十分周知し、活用に向けたきめ細かな情報提供や相談対応等にもぜひ心掛けていただきたいと思います。
同時に、職員の皆さんには、県政の様々な分野での取組に広く目を配り、それぞれが進める取組との連携によって相乗効果を生み出せないか、あるいは事業の手法や進め方が参考になるところはないかとか、そういったことを常に考えて、取組の実効性が高まるように、意欲を持って取り組んでいただきたいと思います。
行財政構造改革の推進
2点目は、「行財政構造改革の推進」についてです。
今、県財政は、人口減少で地方交付税等の歳入が伸び悩む中、高齢化に伴う社会保障費の増大等によって、歳出が歳入水準を上回る硬直化した財政状況が続き、恒常的に多額の財源不足が生じている、そういう構造にあります。
この財源不足を、これまでは最終的に収支のギャップを基金の取崩しで埋めていたわけですが、基金の残高は、100億円を確保したいという目標を下回る水準となっています。
また、今後5年間の財源不足は、これからの国の社会保障制度の充実や地方財政対策の影響を踏まえると、現時点で1,350億円にも上る見通しであり、財政基盤の強化・立て直しは、まさにこれからが正念場です。
このため、5年後を目途に、基金の取崩しに頼らない、収支が均衡した安定的な財政構造の確立を図ることに取り組んでいきます。そのために、総人件費の縮減や公共投資の適正化など「徹底した歳出構造改革」を進めるとともに、改革の効果が発現するまでの「臨時的・集中的な財源確保対策」を実施します。
これらを強力かつ着実に推進するため、4月1日付で、副知事を本部長とする「行財政改革統括本部」を立ち上げ、その事務局として、総務部に「行財政改革推進室」を設置しました。
この度の改革は、本県の未来を見据えた県づくりを進めていくために、決して先送りが許されないものです。職員の皆さんには、本県のたいへん厳しい財政状況を十分認識していただいて、しっかりと危機意識を共有し、あらゆる選択肢を排除することなく、行財政構造改革に全力で取り組んでいただくようお願いします。
明治150年プロジェクトの推進
3点目は、「明治150年プロジェクトの推進」についてです。
来たる「明治150年」に向け、明治の先人たちの精神と偉業を今に活かし、さらに未来へつなげていくための様々な取組を、今年度から明治150年プロジェクト「やまぐち未来維新」として展開していきます。
これまで進めてきた県民の意識啓発や機運醸成に加え、特に、若者への働きかけに重点を置いて、未来を切り拓いていくための「志」を育む、新たな取組を実施するほか、人材育成や活躍促進を図るため、今年度においては、コミュニティ・スクールによる子どもたちの学びや育ちの支援の拡充などに取り組みます。
また、維新胎動の地である山口県から全国的な機運を盛り上げるとともに、このことを通じて本県の存在感を一層高め、交流人口の拡大と地域経済の活力創出につなげるため、薩長土肥4県による東京でのフォーラムの開催や、デスティネーションキャンペーンをはじめとする観光・交流施策を精力的に展開し、広く国内外に向けて本県を力強くアピールしていきます。
そして、平成30年度には、記念事業として開催する「山口ゆめ花博」を中核イベントに据え、集中的なPRと、多彩なイベント等の一体的な実施によって、本県への来県者の増加を図りたいと考えています。
プロジェクトの推進に当たり、今年度から新たに、全体を統括する「明治150年プロジェクト推進室」を総合企画部に設置するとともに、「山口ゆめ花博」の実行委員会事務局についても、名称を「山口ゆめ花博推進室」に変更し、体制を拡充した上で、総合企画部に一元化しました。
この体制のもと、市町や県民の皆様をはじめ、県内の幅広い主体とも一層連携を強めながら、全県を挙げた取組を実施することとしていますので、各部局においても、プロジェクトに主体的に取り組み、しっかりと連携し、より高い相乗効果を発揮していただくようお願いします。
県民の安心・安全の確保
4点目は、「県民の安心・安全の確保」についてです。
昨年発生した熊本地震、間もなく1年となりますけれども、多くの尊い命が犠牲になりました。それとともに、家屋の損壊等により、多数の方が長期にわたる避難生活を余儀なくされるなど、甚大な被害が発生しました。
この地震で得られた貴重な教訓を、今後起こり得る大規模災害への備えに活かしていくため、庁内プロジェクトチームでの検討を重ね、昨年12月に「平成28年熊本地震を踏まえた防災対策」を取りまとめたところです。
今年度予算においても、この対策の具体化を図り、可能なものは速やかに実行することとし、「体制」「物流」「避難」等のテーマに沿って、「体制」では、県・市町による実践的な災害対応研修、「物流」では、関係団体と連携した物資配送訓練の実施、「避難」では、被災者生活再建支援システムの導入の検討など、様々な取組を進めることとしています。
県民誰もが不安なく暮らせることは県民生活の基本であり、私たちは、常に県民の皆様の安心・安全を第一に考えなければなりません。
職員一人ひとりが、「災害はいつでもどこでも起こりうる」ことを肝に銘じ、常日頃から、十分な心構えと備えをしておくことが重要です。いざという時に「想定外」ということであってはいけませんし、常に、情報を的確に収集・管理し、不測の事態に迅速かつ適切に対応できるよう、危機管理を徹底していただくことを改めてお願いしておきます。
県庁における「働き方改革」の推進
5点目は、「働き方改革の推進」についてです。
一億総活躍社会の実現を目指し、国においては、非正規雇用の待遇改善や長時間労働の是正等の「働き方改革」を進めています。
本県においても、「やまぐち働き方改革推進会議」を設立し、ワーク・ライフ・バランスの推進や女性の活躍促進、長時間労働の是正等に、全県を挙げて取り組むこととし、昨年12月には、関係団体とともに、「やまぐち働き方改革宣言」を行いました。また、本年2月からは、プレミアムフライデーの取組もスタートし、働き方改革や経済の活性化の面での効果が期待されています。
こうした状況を踏まえ、皆さんも、時間外勤務の縮減や男性職員の育児休業の取得、プレミアムフライデーの活用等に、積極的に取り組んでいただきたいと思います。
この改革に取り組む上で重要なのは、いかに業務を効率化するか、業務の必要性や優先度を見極め、執行の体制や手法に工夫を凝らしていくかを考え、実行していくことであると考えます。
こうした事務事業の点検・見直しは、先程申しました行財政構造改革を推進するためにも不可欠なものです。職員の仕事と家庭生活の両立を確保し、必要な県民サービスを維持し、さらに向上を目指しながら、徹底的な業務の効率化を図るという難しい課題となりますが、幹部の皆さんが中心となって、しっかりと対応していただくようお願いします。
終わりに
以上、今年度の県政運営に関する私の考え方を申し上げました。
はじめに申し上げたとおり、今年はチャレンジプランの最終年度です。仕上げの年として、着実に、県民の目に見える成果を挙げていかなければなりません。それと併せて、危機的な財政状況にある中で、しっかりとした財政基盤を確立し、そのための行財政構造改革を進めていかなければならないということで、たいへん大きな2つの課題を乗り越えていかねばなりません。そしてまた、明治150年プロジェクトをしっかりと進めて、来年の「山口ゆめ花博」を成功に導いていかなければなりません。
そのためには、県庁の職員の総力を結集し、高い組織力を発揮することが不可欠です。幹部の皆さんには、それぞれの職場で、職員一人ひとりの意欲を高め、持てる能力を引き出し、自由闊達な議論をして、様々な課題がある中で、それを乗り越えていくための職員の力を引き出して、それを結集して組織の力に変えていただきたいと思います。ぜひ、そうした職場づくりに一層努めていただきたいということを、強く期待しております。
そして、県政運営の基本目標である「活力みなぎる山口県」を、チャレンジプランの最終年度にしっかりと実現するように、ぜひ県庁一丸となって取り組んでいきたいと思います。
そうしたことを改めてお願いしまして、私の訓示といたします。ぜひ今年一年、しっかりと頑張りましょう。よろしくお願いします。