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知事発言集・令和3年度本庁部課長・出先機関の長合同会議 知事訓示
皆さん、おはようございます。
令和3年度のスタートに当たりまして、本日は、今年度の県政運営に関する私の考え方について申し上げたいと思います。
新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、昨年は、やむなく録画で配信をする形を採りましたけれども、今回は、「やまぐちデジタル改革」の本格始動の年でもあります。こうしてWeb会議によって、皆さんにお話をさせていただくことといたしました。
その新型コロナウイルスにつきましては、県民、また事業者の皆様の御協力、そして医療従事者の方々の御尽力によりまして、現在、本県における新規感染者の発生は、1日当たりの人数が多くても一桁台という状況で推移しています。
しかし、御案内のとおり、全国では感染者が再び増加傾向にあります。大阪府等の3府県におきましては「まん延防止等重点措置」が適用され、もはや第4波の到来と言われています。年度始めのこの時期は、人の移動や会食の機会も多くなりがちですし、変異株による感染の再拡大も懸念されています。引き続き高い緊張感を持って、監視体制、また医療提供体制の強化に取り組んでいかなければなりません。
また、今月12日からは、いよいよ高齢者を対象としたワクチンの優先接種が始まります。今後、国・市町・関係機関と緊密に連携を行いながら、県民の皆様へのワクチンの接種、これを安全に、着実に進めていくことが必要です。
こうした新型コロナウイルスへの対応をはじめ、県民の皆様の安心・安全を第一に考えて、業務に当たることを全職員の共通認識とした上で、今年度の県政運営についての考え方を申し上げたいと思います。
コロナの時代の県づくりに向けて
人口減少や少子高齢化など、県政が直面する諸課題を克服し、山口県の未来を切り拓いていくためには、本県の強みを活かし、潜在力を引き出して、さらに伸ばしていくことが必要です。こうした考えの下、やまぐち維新プランに基づく取組をこれまで進めてまいりました。
しかしながら、新型コロナウイルスの出現によりまして、感染拡大を防止するために、外出や移動の自粛などで、人と人との接触機会の低減が求められ、これに伴って社会経済活動も大きく落ち込み、県づくりの取組にも影響が生じています。
このため、今年度におきましても、まずは、未だ収束の見通せない新型コロナウイルスから県民の皆様の命と健康を守ることを最優先に、感染症対策の徹底と経済活性化の両立に向けて、万全の対策を講じてまいりたいと思います。
そして同時に、コロナ禍から生まれた社会変革の動きをしっかりと捉えて、県づくりに確実に取り込んでいく。このことは、本県の将来にとって極めて重要なテーマであります。私は、この機を逃すことなく、県政の幅広い分野でデジタル化を強力に進め、また、本県への新たな人の流れをさらに創出・拡大させる、そうしたことを通じ、県づくりの取組を加速化させて、より大きな成果に結びつけていきたいと思います。
コロナに適切に対応しながら、現在の危機を本県の更なる成長へのチャンスに変え、そして活力みなぎる山口県を必ず実現していく。職員の皆さんには、そうした思いをしっかりと共有して、未来を見据えた県づくりに果敢に挑戦していただくことを改めてお願いいたします。
今年度の施策推進方針について
今年度の施策推進に当たりましては、当初予算と昨年度の2月補正予算、これを一体的に編成しました「15か月予算」、その下で、今申し上げましたように、「感染症対策の徹底と経済活性化の両立」、そして「危機から生まれた変化を成長へつなげる県づくりの加速化」、これを2つの大きな柱として、取組を進めていきます。
1 感染症対策の徹底と経済活性化の両立
まず、1つ目の柱が「感染症対策の徹底と経済活性化の両立」です。
今後の感染状況が予断を許さない中、感染の再拡大を食い止めるとともに、低迷する社会経済活動を段階的に引き上げていくことが、県政における目下の最重要課題です。このため、これから申し上げる4つの項目について、国の政策とも連携しながら、柔軟に、そして万全の対策に取り組んでいきます。
1点目は、「感染拡大の防止」です。
更なる感染拡大に備えたPCR検査等の実施体制を整えるとともに、入院患者の受入病床や宿泊療養施設を引き続き確保した上で、医療機関における機器整備等への支援など、医療提供体制の強化に取り組んでいきます。
また、感染症に関する専用相談窓口の設置を継続すること、そして保健所の体制の確保、社会福祉施設等における感染対策への支援等を通じて、感染拡大防止の徹底を図っていきます。
さらに、今後のワクチン接種に向けまして、ワクチン供給体制の構築等を速やかに実施し、また宿泊療養施設において療養者の健康状態を測定できる機器を整備し、サポート体制を一層充実していきます。
2点目は、「県民生活の安定」です。
収入が大幅に減少した生活困窮者等に対する住居確保給付金の支給、また、家計急変世帯の高校生等に対する授業料減免等によって、引き続き、困っている方々に寄り添う支援を行っていきます。
3点目は、「県内経済の下支え」です
感染拡大の影響による資金需要に対応するため、中小企業制度融資の新規融資枠をしっかりと確保していきます。
また、企業の配置転換や求職者の新たな技能習得等を支援し、雇用の維持・創出を支援するとともに、インターネットを活用した販路拡大の支援によって、県内事業者の収益確保を図ります。
そして4点目は、「消費需要の喚起」です。
感染拡大の防止対策が実施された公共交通機関との連携など、安心・安全を前面に打ち出して、観光客のニーズに沿った観光プロモーションを効果的に展開します。
また、オンラインでの観光PRイベントの開催など、感染状況に臨機応変に対応できるように、インターネットを活用したプロモーションの取組を強化してまいります。
これらの取組については、今後の感染状況を見極めながら、昨年度の2月補正予算で計上した、プレミアム宿泊券の発行等による観光需要の喚起、また、県産農林水産物の需要回復・拡大に向けた取組と一体的に、切れ目なく実施し、効果の最大化を図ってまいります。
なお、感染の状況や経済情勢は刻々と変わっていきます。また、孤独・孤立の問題などのように、一定の期間を経て、コロナの影響が顕在化すると考えられるものもあります。そうした変化に常に留意し、求められている対策を適切なタイミングで速やかに実行することが重要となります。さらに追加すべき対策等については、補正予算も編成してまいります。
職員の皆さんには、今後の県民生活、また県内の経済状況を十分に注視していただいて、その時々に我々が何をすべきかをしっかりと考えて、迅速かつ的確に対処していただくよう、重ねてよろしくお願いいたします。
2 危機から生まれた変化を成長へとつなげる県づくりの加速化
次に、2つ目の柱である、「危機から生まれた変化を成長へつなげる県づくりの加速化」です。
今般の感染症への対応においては、我が国の、特に行政分野でのデジタル化の遅れ、これが浮き彫りとなりました。また、テレワークの急速な拡大とこれに伴う地方移住への関心の高まりなど、国民の意識、行動、価値観、そうしたものに大きな変化が生じてきています。
こうした変化を踏まえ、次の3つの項目に重点的に取り組んで、コロナの危機から生まれた社会変革の動きを施策の推進に確実に取り込んでいきたいと思います。
まず1点目は、「デジタル化の推進」です。
今後、我々は、コロナとの共存を前提とした「新たな日常」を確立すると同時に、そのための変容を未来に向けた成長へとつなげていかなければなりません。私は、その原動力となるのがデジタル化であると考えています。
そして、単にデジタル技術を導入するだけでなく、関連する制度、また施策なども併せて変革していく、そうした社会全体のデジタルトランスフォーメーション、DXを一気に進め、活力に満ちた山口県の未来を切り拓いてまいる考えです。
私は、これを「やまぐちデジタル改革」と位置付け、先般、その基本的な方向を示した「やまぐちデジタル改革基本方針」を策定し、4月からは、私自らが最高情報責任者、CIOを兼任し、また総合企画部に「デジタル推進局」を新たに創設し、本格的な推進体制をスタートさせたところです。
この体制の下で、今後、新たに設置する「やまぐちDX推進拠点」を核に、多様な主体との連携・協働を図りながら、県政の幅広い分野で地域課題の解決と新たな価値の創造に向けた本県ならではのDX、「やまぐちDX」の創出に取り組んでまいります。
また、行政分野でのデジタル化については、行政手続のオンライン化等による利便性の向上、AI・RPA等の活用による業務効率化を進め、そして市町の取組をサポートし、一体となって、「デジタル・ガバメントやまぐち」の構築を進めていきます。
さらに、光ファイバ網等による高度なブロードバンド環境の確保、デジタル人材の育成など、これからのデジタル社会を創り支える基盤をしっかりと整えることによって、県民誰もが暮らしの豊かさや地域の活力を実感することができる「デジタル・エリアやまぐち」の形成を目指していきます。
こうした改革の成果は、県民の皆様に目に見える形でいち早く実感していただくことも重要です。このため、特定の政策テーマの下、先導的な取組を「デジタル・魁プロジェクト」として重点的・集中的に実施していくこととしております。今年度においては、子育て支援やスマートスクール構想の推進、公共インフラの維持管理など、10のプロジェクトを展開していきます。
2点目は、「新たな人の流れの創出・拡大」です。
コロナ禍の中で、テレワークを活用した、時間と場所を選ばない新しい働き方の普及が進んでいます。また、人口が集中する都市部の住民の間では、感染リスクの低い地方への移住に関心を持つ人が増えてきています。私は、こうした国民の意識や行動の変化を好機と捉えて、今こそ、本県に新たな人の流れを呼び込んでいくことが重要と考えています。
このため、テレワーク移住とその裾野を拡大するワーケーションの一体的な推進に向けて、全県的な推進体制を新たに構築し、市町・関係団体と連携しながら、受入体制の整備と首都圏企業等への働き掛けを行ってまいります。
また、県庁に地方創生テレワークのモデルオフィスを開設し、山口宇部空港内にワーケーション推進のための拠点施設も設け、これらを起点として、県内各地域への取組を波及させていくこととしています。
さらに、交流人口の更なる拡大を目指し、県内各地のキャンプ場を拠点に、アウトドアスポーツによる新しいツーリズムを展開するとともに、県内観光事業者の情報発信力の向上に向けた支援や、県立美術館の収蔵品のデジタル化等による魅力の創出に取り組んでいきます。
3点目は、「『新たな日常』を支える人材の育成」です。
デジタル化をはじめとする社会変革の動きを取り込み、これからの成長へとつなげていくためには、それを支える人材の育成が今までにも増して重要となります。
このため、デジタル化等に対応した新たな産業人材の育成を加速化していくとともに、先般策定した「新たな時代の人づくり推進方針」に基づき、本県の将来を担い、未来を切り拓いていく若者の育成に向けて、幼児教育・保育の更なる質の向上や子どもたちの創造力・表現力の伸長、グローバルとローカルの視点を兼ね備えた人材の育成プログラムの実施などに取り組みます。
職員としての心構え
以上、今年度の施策推進の方針を申し上げました。併せて、皆さんが仕事を進めていく上での心構えについて、3点、お願いをしたいと思います。
1 幅広い主体との連携・協働
1点目は、「幅広い主体との連携・協働」についてです。
地域が抱える課題はますます複雑化、多様化しています。こうした課題は、県の取組だけで解決することは難しくなってきています。市町はもとより、企業、大学、金融機関、民間団体、そして県民の皆様との連携・協働を一層強化していく必要があります。
その上で、それぞれが有する強みやノウハウ、ネットワークなどを最大限活かしながら、より大きな成果が上がるように取り組んでいくことが重要であり、とりわけデジタル改革の推進に当たっては、このことを強く意識して取組を進めるようお願いいたします。
2 働き方の新しいスタイルへの対応
2点目は、「働き方の新しいスタイルへの対応」についてです。
コロナ禍を契機に、県としても、テレワークやオンライン会議など、「働き方の新しいスタイル」の導入と普及に努めています。
こうした働き方は、非常時におけるBCP対策はもとより、業務改善にも資するものです。県が率先して取り組むことで、企業等の意識を高め、社会全体での気運醸成にもつながっていきますので、引き続き、取組の浸透と定着を図っていかなければなりません。
また、今後、行政手続のオンライン化など、デジタル・ガバメントの構築に取り組んでいく中で、仕事のやり方や進め方についても、抜本的な見直しが求められてきます。
皆さんには、働き方の実践と共に、どうすればより効率的で、県民や事業者の皆様にとって利便性の高い行政サービスが可能になるのかをよく検討していただいて、デジタル社会に相応しい行政としての仕事のあり方を確立していくようお願いいたします。
3 危機管理の徹底
3点目は、「危機管理の徹底」についてです。
近年、全国各地で大規模な自然災害が頻発しています。また、災害以外についても、本県では昨年、上関大橋の損傷事故が発生をいたしました。感染症対策についても、業務継続の観点も含め、万全の備えをしておかなければなりません。
このため、職員一人ひとりが常に緊張感を持って、十分な心構えと備えをしておくことが重要ですし、災害等の発生に際しては、初動対応を的確に行うことが被害の拡大防止や軽減につながっていきます。
このことを改めて念頭に置いて、県民の皆様の安心・安全を第一に、それぞれの職務の中で、日頃から不測の事態に迅速かつ的確に対応できるよう、不断の準備を整えていただきますようお願いいたします。
終わりに
以上、県政運営に関する考え方を申し上げました。
新型コロナウイルスとの闘いは、先ほども申しましたように、第4波に入ってきているとも言われております。長期戦の様相を呈していますが、一方で、感染症対策の切り札として期待されているワクチンの接種も来週から始まり、さらに本格化もしてまいります。そうした新しい動きも始まっています。
職員の皆さんには、コロナの時代にあっても「活力みなぎる山口県」を必ず実現していく、地域の皆さんが元気で、そして明るく、将来に希望が持てる地域にできるように、それぞれの皆さんが業務の中で何ができるかをしっかりと考えて、今年一年、一緒に頑張っていきたいと思います。
私自身も、先頭に立って積極果敢に様々なことにチャレンジしていきたいと思います。
この一年、共に頑張っていきましょう。