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基地関係・沖合移設事業の概要
1 岩国基地沖合移設事業とは
旧滑走路の北側は石油コンビナートなどの工場地帯に、西側は市街地に隣接しており、万が一、航空機事故があった場合、大惨事となる危険性があることから、滑走路を市街地や工場群から遠ざけることによって、その危険性を軽減する必要がありました。
また、旧滑走路を離陸した航空機は、工場群上空の飛行を避けるため、離陸直後に東海上へ向かって急激な旋回をすることから、このために生じる騒音が、周辺の住宅地に大きな影響を及ぼしていました。
岩国市や県は、基地の騒音などに苦しむ地元の声を受けて、昭和43年から四半世紀にわたり沖合移設の要望を続けてきました。
沖合移設事業は、国によって平成8年度に事業着手され、米軍岩国基地の東側海面を埋立て、平成22年5月29日に約1,000m沖合に移設された新滑走路の運用が開始され、平成22年度末に事業が完了しました。
《埋立面積》 | 約213ha |
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《移設後の滑走路》 |
長さ2,440m×幅60m(旧滑走路と同じ規模) |
《実施主体》 | 国(防衛省) |
《総事業費》 | 約2,500億円 |
《予定工期》 | 平成8~22年度 |
2 事業完了までの経緯
昭和43年6月 | 米軍板付基地のF-4ファントムジェット戦闘機が九州大学構内に墜落 |
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同種の戦闘機が岩国基地に配備されていたことから、滑走路を沖合に移設 し、航空機墜落等の危険性や、騒音による日常生活上の障害等の軽減 又は除去を図ろうとする世論が起こる。 |
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43年6月 | 岩国市議会が沖合移設促進を決議 |
47年11月 | 岩国基地沖合移設期成同盟会設立(民間の団体) |
以後継続して国に要望 | |
49年3月 | 山口県議会が沖合移設促進を決議 |
53年6月 | 岩国基地沖合移設促進期成同盟会設立(官の団体) |
以後継続して国に要望 | |
53年6月 | 防衛施設庁が「沖合移設は技術的に可能」と結論 |
56年3月 | 岩国基地沖合移設促進山口県議会議員連盟が発足 |
以後、促進期成同盟会等と連携して国に要望 | |
平成4年8月 | 防衛施設庁が約1,000m沖合へ移設することを決定 |
5年度~ |
実施設計(7年度まで) |
7年7月 | 環境影響評価書を作成 |
8年11月 | 公有水面埋立承認 |
9年3月 | 事業着手 |
20年5月 | 公有水面埋立工事の竣功 |
22年5月 | 新滑走路運用開始 |
23年3月 | 事業完了 |
3 工事の実施
護岸、埋立等の工事は、区域を3工区に分割し、南地区、北地区、中央地区の順に進められました。
4 環境への配慮
事業主体である国は、環境への影響をより少なくするため、さまざまな対策を実施しました。
- 工事の実施に当たっては、学識経験者を含む「環境監視委員会」の指導・助言を得て、環境監視計画を定め、工事期間中、騒音、振動、水質等について環境監視を行いました。
- また、周辺環境への影響を抑えるための具体的な取組みとして、例えば、工事中の濁りの発生を軽減するため、汚濁防止膜を展張し、濁りの拡散防止に努めました。
- 工事区域にある藻場・干潟についても、残存する藻場・干潟の監視活動を行い、保全に努めるとともに、一部消滅する藻場・干潟についても、学識経験者からなる「藻場・干潟回復調査研究委員会」の指導・助言を得て、その回復に努めています。
(汚濁防止膜設置図)