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令和7年2月定例会 請願 使用済核燃料「中間貯蔵施設」の上関町への建設に反対することを求めることについて
件名
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使用済核燃料「中間貯蔵施設」の上関町への建設に反対することを求めることについて
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請願者
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原発をつくらせない山口県民の会 筆頭代表委員 増山 博行
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紹介議員
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木佐木 大助、藤本 一規、河合 喜代、中嶋 光雄、井原 寿加子
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要旨
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使用済核燃料「中間貯蔵施設」の場合、核燃料は2~3年間原子炉で燃やされた後、10〜15年以上、使用済燃料プールで寿命の短い核種の壊変熱を冷却され、空冷に耐えられるほどになってから、キャスクに詰めて原発施設内の貯蔵施設に移される。使用済燃料貯蔵施設の規制に関する原子力規制委員会規則によると、使用済燃料の貯蔵には、金属製の乾式キャスクが使用され、キャスクに不活性ガスを充填して使用済燃料を封入するとしている。1基のキャスクには大型のもので燃料集合体を50体程度収納でき、基本的安全機能として、閉じ込め(密閉)機能、遮へい機能、臨界防止機能、除熱機能を備えるものとされている(日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」による)。原発施設内でのキャスクの保管容量が満杯に近づいたため、原発施設外で保管するための施設が、使用済核燃料「中間貯蔵施設」である。
昨年9月26日、青森県むつ市にある、リサイクル燃料貯蔵(RFS)が運営する中間貯蔵施設に、東京電力柏崎刈羽原発から出た使用済核燃料集合体69体(重量12トン) を収納したキャスクが1基運び込まれ、全国で初の事例となった。RFSが作成した「リサイクル燃料備蓄センターの安全確保への取り組みについて」(2025年2月)には、17項目の「トラブル事例」の記載があり、いずれのトラブルでもキャスクの基本的安全機能に影響はないとされているが、東日本大震災時に見られたようなトラブルの連鎖に耐え得るかどうかは明確ではない。
ところで、原子力規制委員会規則では、キャスクの耐用年数についての記載はない。RFSのリサイクル燃料備蓄センターでは、キャスクを貯蔵建屋に運び込んだ後、50年後には当該の建屋から搬出するとして報道されていることから、RFSで使用されるキャスクは法令の要件を満たす耐用年数が50年として設計・製造されていると読み取れる。当初40年間とされていた原発の長期稼働が認められたように、法令が変われば貯蔵期間が変更、延長される可能性があるのではないだろうか。また、設計の50年耐用を満たすためには、保安規則で決められた間隔で点検・監視が必要である。しかし、キャスク外側からの点検や放射線のモニタリングは可能だとしても、キャスクは施設に密封された状態のまま搬入、保管、搬出(予定)され、施設内で燃料を取り出すことはないとされているように、キャスク内で異常が起こった際には原発施設のプールに戻さなければ中身の確認を行うことはできない。キャスクには一次蓋、その上から二次蓋が取り付けられているが、前出のRFSが作成したトラブル事例でも、一次蓋より内側からの放射性物質の漏えいが起きた場合、運搬用の三次蓋を取り付けて搬出元の原発に移動するとされている。しかし、どのような異常が起きているかも分からないキャスクの運び出しや運搬が、速やかに、安全に行えるという保障はない。
最大の危険はキャスク内で臨界(核分裂の連鎖反応)が起きることである。キャスクの中の燃料集合体は、臨界防止のためにバスケットで仕切られ、密着を防いで間隔を保つ設計になっている。地震等でキャスクの振動・転倒が起こり、バスケットが破損する可能性は考えられる。中性子によって部分的に早く経年劣化する可能性もある。使用済核燃料が再び臨界を起こせば、キャスクは破壊され重大な原子力事故となる。一旦使用済核燃料を受け入れてしまえば、キャスクの設計上の耐用年数にかかわらず、住民は原発事故と隣り合わせの生活を強いられる。このように危険な施設であるにもかかわらず、原発では設定が必要となる、原子力災害対策重点区域の予防的防護措置を準備する区域(PAZ)、緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)の策定が、中間貯蔵施設にはないことも大きな問題である。
上関町における、使用済核燃料「中間貯蔵施設」建設計画の中止を、地元や周辺自治体の住民、山口県民、国民は願っている。山口県は中国電力に、使用済核燃料「中間貯蔵施設」の建設をやめるよう、株主としての意見を出してほしい。
山口県議会は、県民の安心・安全の確保に責任を持つ立場から、中国電力による建設予定地の立地可能性調査の結果を待たずとも、使用済核燃料「中間貯蔵施設」を山口県に造らせないという意思表明をし、その建設にストップをかけるべきである。
よって、使用済核燃料「中間貯蔵施設」の建設に反対し、下記のとおり、決議を採択されるよう請願する。
記
中国電力及び関西電力による上関町での使用済核燃料「中間貯蔵施設」の計画は、上関町住民はもとより、周辺自治体、山口県、瀬戸内海、西日本の住民の安心・安全を脅かすものである。上関町や瀬戸内海の美しい自然を残して住民が安心して暮らせる生活環境を守り、次の世代に手渡すことこそ、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本」とする地方自治法にかなうものである。
よって山口県議会は、次のとおり決議する。
1 上関町での使用済核燃料「中間貯蔵施設」の建設に反対する。
2 山口県知事に対し、上関町での使用済核燃料「中間貯蔵施設」の建設に向けた手続に同意しないよう求める。
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